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公務上の疾病の認定

 公務上の負傷に起因して発生した疾病は、公務上としますが、この場合の公務上外の判断は、比較的困難ではありません。

 しかし、それ以外の疾病の場合、それが公務に起因して発生したものであるかどうかを判断することは、負傷の場合にくらべて困難です。そこで、その判断をめぐって起こる困難さを未然に防止するため、医学経験則上公務と相当因果関係が明らかな疾病を職業病として別にとり出し、これに該当する場合には、特に反証のない限り公務上とする取扱いがなされています。しかし、この職業病として処理しうる疾病の生ずるケースは特定の業務に従事したため特定の疾病に罹患した職員に限られており、その他の疾病はすべて個々の場合について「公務に起因することが明らかな疾病」であるかどうかを判断して決定されることとなります。

(1)公務上の負傷に起因する疾病は公務上のものとし、これに該当する疾病は次に掲げる場合の疾病とする。

  • ア 負傷した当時、何ら疾病の素因を有していなかった者が、その負傷によって発病した場合
  • イ 負傷した当時、疾病の素因はあったが発病する程度でなかった者が、その負傷により、その素因が刺激されて発病した場合
  • ウ 負傷した当時、疾病の素因があり、しかも早晩発病する程度であった者が、その負傷により、発病の時期を著しく早めた場合
  • エ 負傷した当時、既に発病していた者が、その負傷により、その疾病を著しく増悪した場合

(説明)公務上の負傷に基づく疾病には、負傷によって直接発生する疾病(例えば外傷性肋膜炎)だけでなく、その疾病が原因となって続発する疾病(例えば外傷性敗血症からの脳膜炎)も含まれます。また、既往の私的疾病を負傷により著しく増悪した場合もこの認定基準によって取り扱われます。負傷に引き続く疾病が公務上となるには、当該負傷に起因して発病の時期が著しく早められ、又は著しく増悪したことが医学的に証明されなくてはなりません。

(2)次に掲げる職業病は、当該疾病に係るそれぞれの業務に伴う有害作用の程度が当該疾病を発症させる原因となるのに足るものであり、かつ、当該疾病が医学経験則上当該原因によって生ずる疾病に特有な症状を呈した場合は、特に反証のない限り公務上のものとする。

(説明)職業病については、公務とこれに対応する疾病が特定されていて、相当期間にわたり該当の公務に従事した後に該当の疾病を発病した事実が証明されれば、反証のない限り、公務上の疾病と認められます。反証とは、公務以外の事由によって発病したという証明です。

  • ア 物理的因子にさらされる業務に従事したため生じた次に掲げる疾病及びこれらに付随する疾病
    • (ア)紫外線にさらされる業務に従事したため生じた前眼部疾患又は皮膚疾患
    • (イ)赤外線にさらされる業務に従事したため生じた網膜火傷、白内障等の眼疾患又は皮膚疾患
    • (ウ)レーザー光線にさらされる業務に従事したため生じた網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患
    • (エ)マイクロ波にさらされる業務に従事したため生じた白内障等の眼疾患
    • (オ)基金の定める電離放射線(以下「放射線」という。)にさらされる業務に従事したため生じた急性放射線症、皮膚かいよう等の放射線皮膚障害、白内障等の放射線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨え死その他の放射線障害
    • (カ)高圧室内作業又は潜水作業に係る業務に従事したため生じた潜かん病又は潜水病
    • (キ)気圧の低い場所における業務に従事したため生じた高山病又は航空減圧症
    • (ク)暑熱な場所における業務に従事したため生じた熱中症
    • (ケ)高熱物体を取り扱う業務に従事したため生じた熱傷
    • (コ)寒冷な場所における業務又は低温物体を取り扱う業務に従事したため生じた凍傷
    • (サ)著しい騒音を発する場所における業務に従事したため生じた難聴等の耳の疾患
    • (シ)超音波にさらされる業務に従事したため生じた手指等の組織え死
    • (ス)(ア)から(シ)までに掲げるもののほか、物理的因子にさらされる業務に従事したため生じたことの明らかな疾病
  • イ 身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に従事したため生じた次に掲げる疾病及びこれらに付随する疾病
    • (ア)重激な業務に従事したため生じた筋肉、けん、骨若しくは関節の疾患又は内臓脱
    • (イ)重量物を取り扱う業務、腰部に過度の負担を与える不自然な作業姿勢により行う業務その他腰部に過度の負担のかかる業務に従事したため生じた腰痛
    • (ウ)チェンソー、ブッシュクリーナー、さく岩機等の身体に振動を与える機械器具を使用する業務に従事したため生じた手指、前腕等の末しょう循環障害、末しょう神経障害又は運動器障害
    • (エ)電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務に従事したため生じた後頭部、けい部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害
    • (オ)(ア)から(エ)までに掲げるもののほか、身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に従事したため生じたことの明らかな疾病
  • ウ 化学物質等にさらされる業務に従事したため生じた次に掲げる疾病及びこれらに付随する疾病
    • (ア)基金の定める単体たる化学物質又は化合物(合金を含む。)にさらされる業務に従事したため生じた疾病であって、基金が定めるもの
    • (イ)ふっ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂の熱分解生成物にさらされる業務に従事したため生じた眼粘膜の炎症又は気道粘膜の炎症等の呼吸器疾患
    • (ウ)すす、鉱物油、うるし、テレビン油、タール、セメント、アミン系の樹脂硬化剤等にさらされる業務に従事したため生じた皮膚疾患
    • (エ)たん白分解酵素にさらされる業務に従事したため生じた皮膚炎、結膜炎又は鼻炎、気管支ぜん息等の呼吸器疾患
    • (オ)木材の粉じん、獣毛のじんあい等を飛散する場所における業務又は抗生物質等にさらされる業務に従事したため生じたアレルギー性の鼻炎、気管支ぜん息等の呼吸器疾患
    • (カ)綿、亜麻等の粉じんを飛散する場所における業務に従事したため生じた呼吸器疾患
    • (キ)石綿にさらされる業務に従事したため生じた良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚
    • (ク)空気中の酸素濃度の低い場所における業務に従事したため生じた酸素欠乏症
    • (ケ)(ア)から(ク)までに掲げるもののほか、化学物質等にさらされる業務に従事したため生じたことの明らかな疾病及びこれに付随する疾病 エ 粉じんを飛散する場所における業務に従事したため生じたじん肺症又は基金の定めるじん肺の合併症
  • オ 細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に従事したため生じた次に掲げる疾病及びこれらに付随する疾病
    • (ア)患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務に従事したため生じた伝染性疾患
    • (イ)動物若しくはその死体、獣毛、革その他動物性の物又はぼろ等の古物を取り扱う業務に従事したため生じたブルセラ症、炭そ病等の伝染性疾患
    • (ウ)湿潤地における業務に従事したため生じたワイル病等のレプトスピラ症
    • (エ)屋外における業務に従事したため生じたつつが虫病
    • (オ)(ア)から(エ)までに掲げるもののほか、細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に従事したため生じたことの明らかな疾病
  • カ がん原性物質又はがん原性因子にさらされる業務に従事したため生じた次に掲げる疾病及びこれらに付随する疾病
    • (ア)ベンジジンにさらされる業務に従事したため生じた尿路系しゅよう
    • (イ)ベーターナフチルアミンにさらされる業務に従事したため生じた尿路系しゅよう
    • (ウ)4-アミノジフェニルにさらされる業務に従事したため生じた尿路系しゅよう
    • (エ)4-ニトロジフェニルにさらされる業務に従事したため生じた尿路系しゅよう
    • (オ)ビス(クロロメチル)エーテルにさらされる業務に従事したため生じた肺がん
    • (カ)ベリリウムにさらされる業務に従事したため生じた肺がん
    • (キ)ベンゾトリクロリドにさらされる業務に従事したため生じた肺がん
    • (ク)石綿にさらされる業務に従事したため生じた肺がん又は中皮しゅ
    • (ケ)ベンゼンにさらされる業務に従事したため生じた白血病
    • (コ)塩化ビニルにさらされる業務に従事したため生じた肝血管肉しゅ又は肝細胞がん
    • (サ)オルト―トルイジンにさらされる業務に従事したため生じたぼうこうがん
    • (シ)1,2ージクロロプロパンにさらされる業務に従事したため生じた胆管がん
    • (ス)ジクロロメタンにさらされる業務に従事したため生じた胆管がん
    • (セ)放射線にさらされる業務に従事したため生じた白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉しゅ、甲状腺がん、多発性骨髄しゅ又は非ホジキンリンパしゅ
    • (ソ)すす、鉱物油、タール、ピッチ、アスファルト又はパラフィンにさらされる業務に従事したため生じた皮膚がん
    • (タ)(ア)から(ソ)までに掲げるもののほか、がん原性物質又はがん原性因子にさらされる業務に従事したため生じたことの明らかな疾病 

(3)(1)及び(2)に掲げるもののほか、公務に起因することが明らかな疾病は公務上のものとし、これに該当する疾病は次に掲げる疾病とする。

  • ア 伝染病又は風土病に罹患する虞のある地域に出張した場合における当該伝染病又は風土病
  • イ 健康管理上の必要により任命権者が執った措置(予防注射及び予防接種を含む。)により発生した疾病
  • ウ 公務運営上の必要により入居が義務づけられている宿舎の不完全又は管理上の不注意により発生した疾病
  • エ 次に掲げる場合に発生した疾病で、勤務場所又はその附属施設の不完全又は管理上の不注意その他所属部局の責めに帰すべき事由により発生したもの
    • (ア)所属部局が専用の交通機関を職員の出勤又は退勤の用に供している場合において、当該出勤又は退勤の途上にあるとき
    • (イ)勤務のため、勤務開始前又は勤務終了後に施設構内で行動している場合
    • (ウ)休息時間又は休憩時間中に勤務場所又はその附属施設を利用している場合
  • オ 職務の遂行に伴う怨恨によって発生した疾病
  • カ 所属部局の提供する飲食物による食中毒
  • キ アからカまでに掲げるもののほか、公務と相当因果関係をもって発生したことが明らかな疾病

(説明)  キに該当すると認められる疾病の事例としては、脳疾患や心臓疾患等があります。例えば、脳出血の場合には、発病時における公務が被災職員の肉体的精神的負荷を短時間内に急激にもたらしたと認められ、かつ、被災職員の素因を著しく増悪させたと認められる場合、発病前の相当期間通常の勤務と異なった特別の勤務を行い、それが客観的にみて過重な業務であると認められ、かつ、被災職員の素因を著しく増悪させたと認められる場合には公務上とされます。

 この考え方は、前記(1)に掲げた図の場合と同じですが、ただ、負傷を契機としない疾病は、負傷の場合よりさらに発病を誘発した刺激の大きさが捉えにくいとともに、本来本人の素因がなければ発症せず、本人の日常生活・健康管理のいかんによっても増悪する私病であるので、その認定は特に慎重に行う必要があり、公務上とするためには、発病前における心身に与えた刺激の強さあるいは職務の過重性に特にきわ立った顕著さが認められなければならないものです。

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